研究テーマ
中村光研究室では、後天的脳損傷に伴う認知機能やコミュニケーションの障害に対する評価と介入に関する研究を行っています。
言語・記憶・遂行機能などの認知機能、およびそれらを使って行われるコミュニケーションは大脳が司っています。脳血管疾患、脳外傷、神経変性疾患などは脳にダメージを与え、しばしば認知機能やコミュニケーションに深刻な障害を引き起こします。
研究室の研究テーマは以下の通りです。
- 後天的脳損傷に伴う認知機能やコミュニケーションの障害を適切に把握するための評価法の開発。
- 適切な評価に基づく障害の本質への接近。
- 障害を軽減し日常生活に及ぼす影響を最小限にするための介入法の開発と効果測定。
例えば今までに以下のような研究を行ってきました。
- 意味的プライミングの手法を用いた、失語症者や認知症者における非意識的な単語意味処理過程の検索。
〈主な論文〉Nakamura,H., et al.: Dissociations between reading responses and semantic priming effects in a dyslexic patient. Cortex, 33(4), 753-761, 1997.
Nakamura,H., et al.: Semantic priming in patients with Alzheimer and semantic dementia. Cortex,36(2), 151-162, 2000. - 意味性認知症(semantic dementia)における読字障害(表層失読)の分析を通じた人の読字過程への接近。
〈主な論文〉中村光ほか:表層失読(surface dyslexia)からみた単語認知.高次脳機能研究,20(2), 136-144, 2000.
※上記のプライミングの論文にも日本語表層失読への言及あり - 失語症者の喚語障害に対する意味的課題を用いた訓練法(意味セラピー)の適用とその効果測定。
〈主な論文〉中村光ほか:呼称障害と意味セラピー-1失語例における訓練効果研究.総合リハビリテーション, 33(12), 1149-1154, 2005.
中村光:意味セラピー.(よくわかる失語症セラピーと認知リハビリテーション:鹿島晴雄ほか編),永井書店,2008, pp.225-235.
本研究室で追及しているものは、脳や認知の機能そのものの解明ではなく、その障害に対する科学的で適切な評価法・介入法の確立です。本研究室では、障害をより深く理解し、それに基づく効果的な介入を実現するための、pragmaticな研究を志向しています。それにより、認知機能やコミュニケーションに困難を持つ人の生活の質が少しでも向上することに貢献したいと考えています。